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ウェルビーイング施策だけでは離職を防げない理由|セルフケア研修を組織改善につなげる方法

2026/07/16

ウェルビーイング施策だけでは離職を防げない理由|セルフケア研修を組織改善につなげる方法

セルフケア研修や福利厚生制度を導入しているのに、社員の離職が減らない。

相談窓口を設けても、社員から相談が寄せられない。

管理職研修を実施しても、現場での関わり方が変わらない。

このような課題を抱えている企業や団体は少なくありません。

ウェルビーイング施策が離職防止につながらない主な理由は、施策の数が足りないからではありません。

研修や制度が、日々の仕事、管理職の関わり方、業務量、役割分担、職場の人間関係などと切り離されていることにあります。

離職防止に必要なのは、社員個人にセルフケアを求めることだけではありません。

個人、管理職、組織の三つの層をつなぎ、研修で生まれた気づきを、日々の対話と行動、仕事の見直し、組織改善へつなげることが重要です。

株式会社リベラルマネジメントでは、心理学領域の知見と、企業・医療機関などにおける7,200件を超える個別面談の実践知をもとに体系化した自己信頼プロセス™を土台に、研修、個別面談、管理職支援、組織課題の整理を組み合わせて支援しています。

ウェルビーイング施策だけでは、なぜ離職を防げないのか

結論から言うと、社員の離職には、個人のストレス対処力だけでなく、仕事の設計や職場文化が影響しているからです。

世界保健機関(WHO)は、働く人のメンタルヘルスに影響する心理社会的リスクとして、次のような要因を挙げています。

  • 過大な業務量や人員不足
  • 長時間労働や柔軟性のない勤務時間
  • 仕事や業務量を自分で調整できない状態
  • 否定的な行動を許容する組織文化
  • 上司や同僚からの支援不足
  • ハラスメントやいじめ
  • 役割の曖昧さ
  • 仕事と家庭生活との衝突

WHOは、働く人への研修や個人向けのストレス対策に加えて、労働条件や職場環境そのものを見直す組織的な介入を推奨しています(WHO「Mental health at work」)。

つまり、セルフケア研修は重要ですが、それだけで過大な業務量や曖昧な役割、相談しにくい文化が改善されるわけではありません。

2026年の調査が示した「個人の弱さではない」という事実

2026年6月、シンガポールの法律専門職を対象とした大規模調査が公表されました。

この調査では、現役および離職した法律専門職855人への調査と、31件、合計38時間に及ぶ詳細なインタビューが行われました。

その結果、法律専門職の離職は、本人の意志や能力の不足というよりも、仕事の構造や職場文化の影響を強く受けていることが示されました。

特に重視されたのは、次のような日常の仕事体験です。

  • 安心して質問や相談ができるか
  • 間違いや異なる意見を伝えても、不利益を受けないか
  • 直属の上司が不合理な要求から守ってくれるか
  • 上司が本人の成長を支援しているか
  • 仕事以外の生活も尊重されているか
  • 常に時間や業務量に追われていないか
  • 職場で侮辱的、排他的、威圧的な関わりがないか

この調査は法律専門職を対象としたものであり、すべての業種にそのまま当てはめることはできません。

しかし、離職を個人の忍耐力だけで説明せず、仕事の構造、上司との関係、心理的安全性、職場文化を含めて捉える必要性を示す重要な調査です(The Anthro-LawSoc Legal Profession Sustainability Study)。

ウェルビーイングへの投資が増えても、効果測定が難しい理由

労働安全衛生の国際的な専門機関であるIOSHは、2026年に22か国、1,059人の意思決定者を対象とした調査結果を公表しました。

調査では、次のことが報告されています。

  • 67%の組織が、過去1年間に健康・ウェルビーイング上の問題が増えたと回答
  • 64%が産業保健への投資を増やしている一方、効果測定に苦戦
  • 55%がストレス、不安、抑うつなどのメンタルヘルス課題を、主要な職場リスクとして認識

IOSHは、福利厚生や一時的なイベントだけで対応するのではなく、長時間労働、常時接続される働き方、業務上の心理社会的リスクなど、問題の根本原因に予防的に取り組む必要性を指摘しています(IOSH「From perks to prevention」)。

施策を導入したこと自体ではなく、日々の仕事や職場の関係性が実際に変わったかを確認する必要があります。

人は、単に「疲れたから」辞めるのではない

私はこれまで、企業や医療機関などで、7,200件を超える個別面談に携わってきました。

その中で繰り返し見てきたのは、本人が弱いから働けなくなるのではなく、誰にも言えないまま静かに消耗していく人がいるという現実です。

人は、一度疲れたから、すぐに退職するとは限りません。

しかし、次のような状態が続くと、少しずつ組織から心が離れていきます。

  • 疲れていることを言えない
  • 仕事を減らしてほしいと相談できない
  • 相談しても状況が変わらない
  • 自分が我慢するしかないと感じる
  • 何を期待されているのか分からない
  • 仕事の優先順位を確認できない
  • この職場では回復できないと感じる

表面上は普段どおりに働き、仕事をきちんとこなしている人ほど、限界まで不調を見せないことがあります。

そのため、退職の申し出を受けたとき、周囲は初めて「そんなに悩んでいるとは思わなかった」と気づきます。

しかし、本人の中では、その前から小さな違和感、認識のずれ、言葉にならない消耗が積み重なっています。

離職防止では、退職の意思が表明されてから対応するのではなく、まだ言葉になっていない段階の違和感を拾うことが重要です。

セルフケア研修には、どのような役割があるのか

セルフケア研修には、重要な役割があります。

  • ストレスの仕組みを知る
  • 自分の疲労、感情、身体の変化に気づく
  • 自分に合った休息や対処方法を知る
  • 必要なときに相談する方法を学ぶ
  • 自分の状態を周囲へ伝える言葉を持つ

管理職向けのラインケア研修にも、重要な役割があります。

  • 部下の小さな変化に気づく
  • 部下の話を聴く
  • 管理職だけで問題を抱え込まない
  • 人事や専門機関など、適切な支援先へつなぐ
  • 仕事上の負荷と本人の状態を分けて整理する

研修は、個人と組織が共通の見方や言葉を持つための入口です。

ただし、研修で内容を理解しても、翌日から現場で実践できるとは限りません。

セルフケア研修だけでは変わらない三つの理由

1.職場の条件が変わっていない

「部下の話を聴くことが大切」と理解しても、管理職自身が多くの業務を抱えていれば、面談の時間を確保できません。

「困ったときは相談しましょう」と伝えても、相談内容が本人の意図しない形で共有される職場では、安心して話すことはできません。

研修で学んだことと、現場で実行できることの間には隔たりがあります。

2.セルフケアが個人の責任になっている

セルフケアを「自分の心は自分で整えてください」という意味で捉えると、組織が生み出している負荷まで個人の責任に戻してしまいます。

例えば、次のような問題です。

  • 業務量が多すぎる
  • 特定の人に仕事が集中している
  • 役割や責任の境界が曖昧である
  • 相談しても仕事の配分が変わらない
  • 上司と部下で仕事の目的や優先順位の理解が違う
  • 問題のある関わり方が見過ごされている

このような状態で、個人にだけ「ストレスに強くなりましょう」と求めても、根本的な解決にはなりません。

3.研修後の対話と振り返りがない

研修を受けた直後は、自分や職場について多くの気づきが生まれます。

しかし、その気づきを日常の中で試し、振り返り、必要に応じて修正する機会がなければ、以前の仕事の進め方や関係性に戻りやすくなります。

研修後に必要なのは、新しい研修を追加することだけではありません。

実践した結果を確認し、現場で何が障害になっているのかを整理することです。

離職防止に必要な「個人・管理職・組織」の三層支援

離職防止と人材定着を進めるには、個人、管理職、組織の三つの層を分けて考え、同時につなぐ必要があります。

個人への支援

個人への支援では、自分の状態を把握し、必要な行動を選べる状態を育てます。

  • 疲労、感情、身体の変化への気づき
  • ストレスへの対処
  • 自分の考えや困り事の言語化
  • 必要な支援を求める力
  • 自分の役割や境界線の確認
  • 個別面談や外部メンタリング

管理職への支援

管理職への支援では、部下の問題をすべて背負わせるのではなく、日常の関わり方と仕事の整え方を支援します。

  • 部下の変化に気づく視点
  • 話を聴く方法
  • 指示や期待の伝え方
  • 仕事の優先順位の整理
  • 役割と判断範囲の明確化
  • 人事や専門職への適切な接続
  • 管理職自身の負担への支援

組織への支援

組織への支援では、個人の不調や離職を、本人だけの問題として扱わず、仕事や組織の構造との関係を確認します。

  • 業務量と仕事の偏り
  • 役割、責任、権限の範囲
  • 評価や指示の仕組み
  • 相談経路と情報共有のルール
  • 経営、管理職、現場の認識差
  • 職場の人間関係と心理的安全性
  • 研修後の行動変化と組織の変化

三つの層のどれか一つだけを変えようとしても、変化は定着しにくくなります。

個人の気づきを管理職の関わり方へつなぎ、管理職だけでは変えられない問題を組織の改善へつなげることが重要です。

仕事について詳しく聴くと、組織の状態が見えてくる

組織から相談を受けたとき、最初に話を伺う相手は、社長、経営層、人事担当者、管理職など、組織によって異なります。

まず、その方が感じている問題だけでなく、次のことを伺います。

  • どのような立場から組織を見ているか
  • 何を課題だと考えているか
  • どのような状態を目指しているか
  • これまで、どのような対応を行ったか
  • 何がうまくいかなかったか

必要に応じて、現場で働く方にも個別面談を行い、実際の仕事について詳しく伺います。

  • 担当している業務
  • 一日の仕事の流れ
  • 自分の役割をどう理解しているか
  • どこまで自分で判断してよいと考えているか
  • 上司から何を求められていると理解しているか
  • 仕事で大切にしていること
  • 現在、困っていること

同じ組織について話していても、経営者、管理職、現場の社員では、見えているものや重要だと感じることが異なります。

経営者は十分に伝えたと考えていても、現場では具体的な行動に落とし込めていない。

管理職は指導しているつもりでも、部下は何を期待されているのか分からない。

現場では大きな負担になっていることが、経営側には小さな運用上の問題に見えている。

このような認識差を、単に「コミュニケーション不足」とまとめてしまうと、本当の課題を見落とします。

  • 価値観の違いなのか
  • 役割理解の違いなのか
  • 目的が具体的な仕事へ落とし込まれていないのか
  • 教え方や伝え方が合っていないのか
  • 仕事量や権限の問題なのか
  • 安心して話せる文化があるのか

複数の立場から話を聴き、人、仕事、関係性、組織の仕組みを重ねて見ることで、問題の構造が見えてきます。

第三者が組織に入る意味

第三者が入る意味は、経営側と社員側のどちらか一方の味方をすることではありません。

それぞれの立場から話を聴き、次の情報を重ねて理解することです。

  • 経営の意図
  • 管理職が抱えている制約
  • 現場で実際に起きていること
  • 個人が感じている負担
  • 仕事や役割の構造

上司が伝えた内容と、現場が受け取った内容に違いがあれば、認識を整理し、相手に届く言葉へ翻訳します。

当事者同士がすぐに直接話し合うことが難しい場合は、第三者を介した安全な対話の経路をつくります。

第三者が永遠に間に入り続けることが目的ではありません。

  1. 最初は第三者が認識を整理し、対話を支える
  2. 次に、当事者同士で話せる範囲を少しずつ増やす
  3. 最終的には、組織の中で課題を話し合い、自分たちで改善できる状態を目指す

リベラルマネジメントの組織変容伴走とは

株式会社リベラルマネジメントでは、研修を一日で終わるイベントとは考えていません。

研修は、個人と組織が自分たちの状態に気づき、共通の見方や言葉を持つための入口です。

組織の状態に応じて、次の支援を組み合わせます。

  • セルフケア研修
  • 管理職向けラインケア研修
  • 個別面談
  • 外部メンタリング
  • 管理職への助言と対話支援
  • 教え方、伝え方の改善支援
  • 経営と現場の認識差の整理
  • 職場課題の可視化
  • 関係者間のファシリテーション
  • 組織改善プロジェクトへの継続的な伴走

支援の順番も、組織によって異なります。

研修から始める場合もあれば、経営者や人事からの相談を起点に、現場への個別面談を行う場合もあります。

先に個別面談を行い、そこで見えてきた課題をもとに、研修や管理職支援を設計することもあります。

大切なのは、決められたサービスをそのまま当てはめることではありません。

その組織で何が起きているのかを丁寧に捉え、必要な支援を選び、実施後の変化を確認しながら、支援を組み直すことです。

自己信頼プロセス™とは

自己信頼プロセス™は、株式会社リベラルマネジメント代表・森内靖恵が、心理学領域の知見と、7,200件を超える個別面談の実践知をもとに体系化した実践的な状態変容のプロセスです。

次の五つの段階で、自分の状態と向き合います。

自己信頼プロセスの5段階。気づく、聴く、つながる、選ぶ、信じる
  1. 気づく:自分の身体、感情、思考、行動に起きている変化を捉える
  2. 聴く:不安、疲労、違和感が何を伝えようとしているのかを確認する
  3. つながる:切り離されていた身体、感情、思考、行動をつなぎ、自分の状態を整理する
  4. 選ぶ:必要な休息、相談、支援、境界線、次の行動を選ぶ
  5. 信じる:自分の感覚や経験を生かし、選んだ一歩を進める

自己信頼とは、つらい状態でも我慢し続ける力ではありません。

自分の状態に気づき、必要な支援を求め、自分と周囲に必要な変化を選ぶ力です。

組織にも同じ姿勢が必要です。

  • 現場の違和感に気づく
  • 社員や管理職の声を聴く
  • 個人の問題だけにせず、仕事や関係性、組織の状態とつなげて捉える
  • 必要な対話や改善を選ぶ
  • その改善を続けられる組織の力を信じ、実践する

個人の自己信頼と、組織が自分たちで課題を扱う力は、互いにつながっています。

組織のウェルビーイングを見直す五つのチェック

次の項目に当てはまるものがないか、確認してみてください。

  1. セルフケア研修を実施しているが、その後の振り返りや支援がない
  2. 個別面談を行っても、同じ組織課題が繰り返されている
  3. 管理職によって、部下への関わり方や支援の質に大きな差がある
  4. 社員の間に「相談しても状況は変わらない」という認識がある
  5. 離職理由が「一身上の都合」のまま、背景を十分に把握できていない

複数当てはまる場合は、個人向けのセルフケアだけでなく、管理職の関わり方や、仕事・組織の構造を見直す時期かもしれません。

よくある質問

Q1.ウェルビーイング施策を行っても、離職が減らないのはなぜですか?

セルフケア研修や福利厚生制度があっても、過大な業務量、相談しにくい文化、役割の曖昧さ、管理職との認識差など、社員を消耗させる仕事や組織の状態が変わらなければ、離職防止につながりにくいためです。

Q2.セルフケア研修は意味がないのでしょうか?

いいえ。セルフケア研修は、自分の状態に気づき、適切な対処方法や相談方法を知り、組織内に共通言語をつくる重要な入口です。研修後の対話、個別面談、管理職支援、仕事の見直しへつなげることで、学びを現場の行動として定着させやすくなります。

Q3.社員のメンタルヘルス問題は、すべて組織課題なのでしょうか?

すべてが組織課題とは限りません。ただし、個人の不調の背景に、業務量、役割、関係性、評価、情報共有、職場文化などが影響している場合があります。個人の状態と、仕事・組織の状態の両方を確認することが重要です。

Q4.研修後の伴走では何を行いますか?

個別面談、管理職への助言、教え方や伝え方の支援、経営と現場の認識差の整理、関係者間のファシリテーション、職場課題の可視化、組織改善プロジェクトへの伴走などを、組織の状態に応じて組み合わせます。

Q5.自己信頼プロセス™とは何ですか?

自己信頼プロセス™は、「気づく・聴く・つながる・選ぶ・信じる」の五つの段階を通して、自分の状態を把握し、必要な支援や次の行動を選べる状態を育てる実践的なプロセスです。

Q6.リベラルマネジメントは、どのような組織を支援していますか?

企業、自治体、医療機関、教育機関などを対象に、メンタルヘルス研修、管理職研修、個別面談、外部メンタリング、キャリア支援、対話支援、組織課題の整理などを行っています。オンライン研修やオンライン面談、全国への出張にも対応しています。


研修を、現場の変化につなげたい企業・団体の方へ

セルフケア研修や管理職研修を実施しているものの、現場の変化や離職防止につながっていない。

個別面談を行っても、同じ問題が繰り返されている。

経営、管理職、現場の認識にずれがあるが、どこから整理すればよいか分からない。

株式会社リベラルマネジメントでは、研修、個別面談、管理職支援、組織課題の整理、継続的な伴走を組み合わせた支援を行っています。

社員個人の問題として終わらせず、現場で何が起きているのかを丁寧に捉え、対話と具体的な改善につなげます。

組織の状況を伺いながら、研修から始めるのか、個別面談や管理職支援から始めるのかも含め、必要な支援の入口を一緒に検討します。

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参考文献・参考情報

執筆者

森内 靖恵

株式会社リベラルマネジメント代表取締役。心理学系大学院修了。スクールカウンセラー、人材業界、アパレル業界、経営コンサルティング会社での経験を経て、2015年に株式会社リベラルマネジメントを設立。企業・自治体・医療機関などで、メンタルヘルス支援、人材育成、個別面談、管理職支援、組織づくりに携わる。企業での個別面談実績は7,200件を超える。