2025/10/12
“何もしていない”と感じる部下をどう支える?-「結果詰め」から「関係起点」へ。小さな前進を見える化する実務ポイント-
はじめに
職場で、こんな声を耳にしませんか?
- 「今日は全然進まなかった…」
- 「何もしていない気がする」
これは真面目で頑張り屋な人ほど起こりやすい“感じ方”です。
実際には、何もしていないわけではありません。
自分には厳しいのに、他の人には「そんなことないよ、〇〇はできてるよ」と言える。
そのギャップを組織としてどうケアするかが、チーム力を左右します。
1. タスクは“成果物”だけじゃない(2分類でスッキリ)
タスクには2種類あります。まずは見方をそろえることが大切です。
- 成果物タスク
売上・契約・レポートなど、形に残るもの(“やった感”が出やすい) - 基盤タスク
体調管理・整理整頓・準備・休養など、次の行動を支えるもの(軽視されがち)
多くの場合、「何もしていない」と感じるのは、①成果物タスクが進まなかった日の自己評価です。
でも実は、②基盤タスクがしっかり積み上がっていることが多い。
基盤が整うほど、思考→行動→結果が安定します。
2. なぜ「結果と行動ばかり」だと逆効果になる?(成功循環モデル)
ダニエル・キムの成功循環モデルでは、
関係の質 → 思考の質 → 行動の質 → 結果の質 →(再び)関係の質
という良い循環を示します。
一方で、結果や行動だけを詰める運営になると——
- 恐れが増える:相談・試行錯誤が出にくい(心理的安全性↓)
- 短期最適:長期の学びより“今の数字”が優先(思考の幅↓)
- 隠す文化:未確定情報や失敗の“早出し”が減る(学習が回らない)
結果として、
関係の質↓ → 思考の質↓ → 行動の質↓ → 結果の質↓ の逆回転に陥ります。
正しい順番は「関係→思考→行動→結果」。ここを運営設計で守ることが鍵です。
3. Small Wins(小さな前進/小さな成功)を“見える化”する
Small Wins(小さな前進/小さな成功)とは、
大きな成果の途中にある具体的で達成可能な小さな進歩のこと。
- 認識する(自分で気づく)
- 記録する(手帳やアプリに残す)
- 共有する(チームでねぎらう)
この3つを回すだけで、自己効力感が高まり、次の一歩が軽くなります。
そして、基盤タスク(体調・整理・準備・休養)もSmall Winsとして扱うことで、
**「何もしていない」日が、実は“前進していた日”**に変わります!
Small Wins(小さな前進/小さな成功)=具体的で達成可能な小さな進歩。
認識・記録・共有により、自己効力感とチームのモチベーションが持続的に高まる。
4. 組織に入れる“3つの工夫”(制度 × 対話 × 指標)
組織の状況によっても異なるかと思いますので、ぜひ①−③を参考にしてください!
① 制度に入れる(評価・運用)
- 人事評価項目に基盤タスクの行動例を明記
例:事前準備/ドキュメント整備/引き継ぎ/休養計画 - 週次で**“整える日”**を設定(会議を詰めず、情報整理に充てる)
② 対話に入れる(1on1・会議)
- 1on1冒頭30秒:**「今週のSmall Wins(小さな前進)」**を必ず確認
- 会議の型を固定:目的 → 事実 → 解釈 → 次の一歩(1つ)
③ 指標に入れる(成果KGIと並列で)
- 学習KPI:仮説数/検証数/学び共有本数
- 健全性KPI:1on1実施率/有給取得率/心理的安全性サーベイ
- Small Winsログ:個人・チームの“前進”件数
5. 言い方を変える(心理的安全性を保つOK/NG)
- NG:「なんでできてないの?」
OK:「前提のどこで詰まった?私たちで外せる制約はどれ?」 - NG:「いつまでに数字を出す?」
OK:「目的に一番効く手立ては?今日の一歩は何?」 - NG:「ミスは報告を徹底」
OK:「未確定・違和感の早出しは大歓迎するよ!粗い段階ほど価値があるからね!」
6. 1週間ミニ実験(すぐ回せる導入ステップ)
- Day1:全員が「Small Wins(小さな前進)」を1つ・30秒で共有
- Day2–3:会議は「目的→事実→解釈→次の一歩(1つ)」で短く
- Day4–5:最小実験で素早く検証(合意に時間をかけすぎない)
- Day6:数字以外の学びを1枚に可視化
- Day7:感謝ラウンド → 来週の仮説を1つだけ選ぶ
ポイント:“小さく・速く・見える化”で、関係→思考→行動→結果の正回転に戻す。
7. まとめ
- 成果だけを見ると、基盤が痩せ、関係の質が下がり、成果も下がる。
- Small Wins(小さな前進)と基盤タスクを“見える化”して正式に評価する。
- 正しい順番 「関係→思考→行動→結果」 を運営設計で守る。
<取り組みポイント>
⭐️1on1冒頭
「今週の**Small Wins(小さな前進)**を1つ教えてください。どんな小さなことでもOKです。」
⭐️会議の型
目的 → 事実 → 解釈 → 次の一歩(1つ)
⭐️週次の“整える日”
- 予定ブロック:資料整理・下調べ・引き継ぎ・休養計画
- 終了時に“前進ログ”を1行記入(個人/チーム)
参考
- 成功循環モデル(関係→思考→行動→結果の正回転/逆回転)
- Small Wins(小さな前進/小さな成功)と自己効力感
- 心理的安全性(学習と挑戦の前提)
note記事もぜひご覧くださいね!
https://note.com/libe_mane/n/n489dbd5d0961?sub_rt=share_pw